坂本鉄男 イタリア便り 同性婚法の一歩前

2001年4月のオランダに続いて、03年6月にはベルギーで同性婚が法的に認められて以来、現在では欧州連合(EU)諸国の大部分の国で同性婚が法的に許可されるようになっている。

だがイタリアでは、カトリック教会が何世紀にもわたり、「結婚とは男と女が生涯離れることなく、子孫をつくり家族を構成することを神の前で誓う神聖な契約」と教え、「子供がつくれない同性愛は神の教えに背く罪悪」とさえ教えてきた。このため、これまで同性婚が認められる余地はなかったのである。

だが、最近の社会的要求とEU諸国からの圧力もあって、イタリア上院は2月25日、同性婚法の一歩前の段階とも言うべきシビル・ユニオン(別名シビル・パートナーシップ)法案を可決した。ただ、反対派を納得させるため問題点となった「同性婚者の養子縁組」に関する条項を削除するなどの妥協点があり、完全な同性婚法とはいえない。

同性婚は今や世界的な流行である。イタリアでもこれまで、一部の州や自治体がシビル・ユニオンを認めてきたし、わが国でも昨年春、東京都渋谷区議会が「同性パートナー条例」案を可決している。家庭から「夫」「妻」「父親」「母親」の言葉が消える日が遠くないような気がしてきた。

坂本鉄男

(2016年3月6日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)