こんにちは。皆さんお元気ですか?どのような新年のスタートをお迎えになったでしょうか?早いもので2016年に入りもう1ヶ月が過ぎようとしています。
さて、本年度のお便りは、少し視点を変えて私たちの住む世界から遠く離れた場所、太陽系の惑星をキーワードにお届けします。暗いニュースの目立つ近年ですが、太陽に照らされて夜空に光る惑星にあやかり、私たちの2016年も明るく輝くるよう願いを込めてお便りしたいと思います。
現代イタリア語で惑星を意味する名詞はpianeta。ラテン語のplanētaから派生してできた言葉ですが、もともとはギリシア語で「さまよい行く」という意味の動詞planáōから生まれています。古くは空を移動しているように見えた天体の総称で、惑星だけでなく太陽や月も含んでいました。
古代ギリシアの天文学者プトレマイオスは地球を宇宙の中心とする天動説を唱え、地球から近い順に、月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星、恒星と並んでいると考えました。
詩人ダンテ・アリギエーリはこの宇宙観に則り、『神曲』の中で天国界の第1~8天までを月天、水星天、金星天、太陽天、火星天、木星天、土星天、恒星天としています。
古代から地動説を唱える学者はいたものの、近代までは地球を中心とする天動説が広く信じられていました。プトレマイオスの天動説に決別し、太陽を中心とした惑星の体系を唱えて旧来の宇宙観を転回したのは、ポーランドの天文学者コペルニクスです。世界の認識に大転換を与えた地動説は社会に大きな波紋を投じました。
天文学の父と呼ばれるガリレオ・ガリレイは、コペルニクスの地動説を支持したために17世紀に宗教裁判にかけられています。ガリレオは地動説を放棄する宣誓をした後で、「E pur si muove!(それでも地球は動いている)」と独りごちたと伝えられています。
皆さんもご存じの通り、現在は太陽のまわりを回る惑星は地球を含めて8つとされています。私たちの住むTerra(地球)をのぞく7つの惑星は、Mercurio(水星)、Venere(金星)、Marte(火星)、Giove(木星)、Saturno(土星)、Urano(天王星)、Nettuno(海王星)と、イタリア語ではローマ神話の神々の名前がつけられています。地球にだけ神さまの名前がつかなかったのは、天と地、神と人間を分けていた古代の世界観の反映と言えるでしょう。
クリスマス休暇から職場や学校に戻り一段落する1月後半あたりは、最近のヨーロッパでは1年で最もナーバスな気分に陥りやすい時期とされているとか。E pur si muove! 私たちの一喜一憂にお構いなく宇宙で回り続ける地球や惑星を思うと、悩みや不安もずいぶんと小さく感じられるかもしれませんね。
ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲