ローマ法王の権限は絶対的なものだけに、この突然の宣言はカトリック教会全体に大きな驚きを与えたが、はや、特別聖年の始まりまで残すところ2カ月となった。
聖年とは、神がカトリック教徒の罪を特別に許す年で、1300年に制定された。初めは原則として50年ごとに行われたが、次いで25年ごとにほぼ定着してきた。つまり、この前の聖年は2000年で、次の聖年は2025年になるわけだ。
だが、特別な目的があるときは、25年ごとでなくても法王の権限で特別聖年を宣することが可能である。過去100年間に限っては割合に多く、1933年のピオ11世によるもの、1983年のヨハネ・パウロ2世によるものがあり、今度の特別聖年は3回目になる。
米国とキューバの国交再開の陰の立役者として、両国訪問で大歓迎を受けた現法王は、米国議会で死刑の廃止を訴え、国連総会では難民の救助を訴えた。法王は、いまこそ諸国民が「慈悲の心」を持って、助け合わなければならないと説いているのである。
坂本鉄男
(2015年10月4日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)