5月30日に第67回談話会が開催され、日本ロッシーニ協会会長の水谷彰良氏を講師にお迎えして、「現代によみがえる19世紀の天才作曲家ロッシーニ」をテーマにお話していただきました。(参加者数35名)
ロッシーニはモーツァルトに続いて現れた天才作曲家であり、シューベルトやベート-ヴェンと同時代者でした。彼は早熟な才能を顕し12歳で4重奏ソナタ、18歳からオペラ作曲家として活動しましたが、その期間はわずか20年間にすぎません。ロッシーニはその20年間に驚異的なスピードで進化し、伝統的なオペラの形式を完成に導き、≪ギョーム・テル≫(日本では≪ウィリアム・テル≫の題名で知られる)によりロマン派歌劇の扉を開いて、37歳でオペラの筆を折りました。
歌の技法を極限まで高めたベルカントと呼ばれる声楽様式もロッシーニにより頂点を迎えましたが、1840年ごろを境にベルカントの時代が終わりを告げると、その後はロッシーニはオペラ・ブッファの作曲家としてのみ認知されていました。しかし、ロッシーニはオペラ・セーリアの改革を進め、カトリックの厳しい制約を打ち破って、舞台上での殺害や自決などの悲劇的結末を採用した作劇をしました。19世紀末には≪セビーリャの理髪師≫≪セミラーミデ≫≪ギョーム・テル≫だけがレパートリーに残るような状態でしたが、20世紀半ばにマリア・カラスがロッシーニのオペラ・セーリアを歌って再評価が始まり、故郷ペーザロで始まったロッシーニ音楽祭などにより、ロッシーニの音楽の進化と革新性の見直しが始まりました。現在では世界の歌劇場における上演数ではワーグナーを抜き、ヴェルディ、モーツァルト、プッチーニに続いて第4位となっています。
お話の中で、初期の作品からさまざまな歌手によるベルカント様式、声と歌唱の華麗な技法の例、≪オテッロ≫と≪マホメット2世≫からオベラ・セーリアの悲劇的結末の例、またパリ時代のロッシーニの作品≪ランスへの旅≫≪オリー伯爵≫≪ギョーム・テル≫の映像を見せていただきました。短い時間で、さわりだけでしたが緻密にご準備されているので十数本の作品を楽しく鑑賞できました。
ロッシーニは美食家としても大変有名で、そのお話も伺いたかったのですが時間が足りずに伺えず残念でした。またの機会を作りたいと考えています。美食家としてのロッシーニを物語るものとして、先生がポテトチップスの「ロッシーニ味」という商品を見せてくださいました。どんな味なのか是非買って試してみようと思います。