古代ローマでは、モニュメント、彫像、碑文などを通じて、皇帝たちは自らのイメージを人々に伝えていました。現在でも、彼らが残した記録物は地中海やヨーロッパ各地で目にすることができます。ローマ皇帝たちは、これらの記録物を通じてどのようなイメージを伝えようとしたのでしょうか。また、皇帝のイメージはどのように利用されたのでしょうか。この全5回の連続セミナーでは「イメージ」を手がかりとして、歴史や美術など様々な立場から古代ローマの皇帝たちの姿を紹介したいと思います。 |
4世紀に活躍したコンスタンティヌス帝(位306-337年)は、キリスト教を公認したほか、新首都コンスタンティノポリスを建設するなど、それまでのローマ帝国の政策とは隔たった、革新的な試みを行った皇帝として記憶されています。 しかし、コンスタンティヌス帝が帝国の覇権を握り、後世に記憶されるようになるまでにはさまざまな紆余曲折がありました。そこで本セミナーでは、コンスタンティヌス帝が生きた時代、そして彼が死んだ後の時代という二つの段階を扱いながら、皇帝のイメージがどのように利用されていったのかを見ていきたいと思います。 コンスタンティヌス帝は、帝国の政治的混乱に終止符を打ったディオクレティアヌス帝(位284-305年)が残した政治的遺産に直面せざるを得ませんでした。とりわけ、ディオクレティアヌスが導入した複数皇帝による共同統治体制は、帝国の現実的問題に対応するために不可欠な措置ではありましたが、同時に後継者問題をはじめとした新たな問題をもたらすことになりました。 コンスタンティヌスが残した図像やモニュメントにはそのような政治状況と関連させられるような特徴がいくつも認められることを指摘します。そして、華々しい事績を残したコンスタンティヌス帝は、後の時代になるとさまざまな脚色を加えられて記憶されることになります。その変容する皇帝像を通じて、歴史が作られていく一局面を覗いてみることにしましょう。 |
講師紹介: ■田中 創(たなか はじめ) 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。文学博士。日本学術振興会特別研究員を経て、現在は東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授。専門は古代ローマ史、初期ビザンツ史。ローマ帝国の行政制度や地中海世界の都市文化を研究している。訳書:『リバニオス 書簡集』(京都大学学術出版会、2013年) |
申込名 | 開催日 | 時間 | 会場 | 参加費 | 備考 | |
S-SR5 | 7/13(月) | 18:30–20:00 | 青山 石川記念 ルーム 201 | 一般/受講生 | 3,000 | 終了 |
日伊協会会員 | 2,000 |