古代ローマでは、モニュメント、彫像、碑文などを通じて、皇帝たちは自らのイメージを人々に伝えていました。現在でも、彼らが残した記録物は地中海やヨーロッパ各地で目にすることができます。ローマ皇帝たちは、これらの記録物を通じてどのようなイメージを伝えようとしたのでしょうか。また、皇帝のイメージはどのように利用されたのでしょうか。この全5回の連続セミナーでは「イメージ」を手がかりとして、歴史や美術など様々な立場から古代ローマの皇帝たちの姿を紹介したいと思います。 |
ローマ皇帝の像は、しばしば馬像と共にモニュメントにあらわされました。この回では、凱旋行進や戦場場面において、皇帝の権威付けやプロパガンダのため、馬の表現がどれほど大きな役割を果たしているのかについてお話します。 考察する作品は、《マルクス・アウレリウス帝騎馬像》を中心に、《トラヤヌス帝記念柱》、《ティトゥス帝凱旋門》、歴代皇帝のコイン図像などです。ところで、当時、理想とされた皇帝の馬は、どのような姿だったのでしょうか。実際の馬の動きと比較すると、皇帝騎馬像の馬の形が、皇帝たちにとって最も重要な栄誉のひとつである凱旋行進から大きな影響をうけたことがわかります。しかも戦車や騎乗での凱旋行進の無くなった19世紀の騎馬像にあってもなお、古代ローマの騎馬像が手本だったのです。このような造形上の、ローマ皇帝と馬との関係もみていきたいと思います。 またなぜ馬に焦点を当てたかをより理解していただくために、当時の社会的背景、例えば古代ローマ社会において馬が担った多くの重要な役割や、庶民から皇帝までを熱狂させた様子などを、作品の画像で紹介します。加えて、皇帝と馬のエピソードや、碑文やモザイクに記された馬名の史料にもふれる予定です。 |
講師紹介: ■中西 麻澄(なかにし ますみ) 東京大学大学院総合文化研究科学術研究員。東京藝術大学ほか非常勤講師。『古代ローマ社会における馬―モニュメント、美術作品から読み解くローマ人の馬へのまなざし―』にて博士号(学術/東京大学)。専門は美術史。趣味の乗馬を契機に、現在は馬の美術表現を研究している。 |
申込名 | 開催日 | 時間 | 会場 | 参加費 | 備考 | |
S-SR4 | 6/19(金) | 18:30–20:00 | 青山 石川記念 ルーム 201 | 一般/受講生 | 3,000 | 終了 |
日伊協会会員 | 2,000 |