2015年連続文化セミナー 『古代ローマの皇帝たちとそのイメージ』
第2回 ローマ共和政期とアウグストゥス治世の美術作品
―初代皇帝アウグストゥスによる皇帝美術の創出に着目して―(報告)

roma-houkoku-14月17日(金)18:30~20:00、2015年連続文化セミナー 『古代ローマの皇帝たちとそのイメージ』シリーズ第2回が開講され、参加者は約30名でした。今回のセミナーから各論に入り、今回は肖像や建築物などの美術品から、アウグストゥス皇帝を中心に皇帝のイメージがいかに形成されたか話していただきました。

まずローマの起源から説き起こし、エトルリアの支配から脱して共和政を樹立したローマは、やがてギリシャの強い影響を受けることとなるが、単にギリシャの模倣でないことに注目しなければならない。例えばフォルトゥーナ・ウィリリスの神殿は、縦長で、正面からしか入れない形態であることとか、ウェスタ神殿のように円形であったり、フォルトゥーナの神域のように丘の斜面全体を利用するなど、明らかにパルテノン神殿に代表されるギリシャの神殿とは形態を異にしている。また肖像にしても貴族がその社会的な特権的な地位を誇示するための手段であったから個人の顔を忠実に複製したものであって、ギリシャの理想的な顔の肖像とは趣を異にするものであった。

さて前44年カエサルの暗殺後、後継者となったオクタウィアヌスは前27年に元老院からアウグストゥス(尊厳者)という称号を与えられる。この時をもって共和制と帝政の境目とされる。アウグストゥスは若きリーダーとして、また死後に神とされたカエサルの息子として自分を神の子としていたから、彼の彫像は神のように超越しており、死の間際まで若い姿で表現された。またアウグストゥスによる公共建築プロジェクトの中で最も野心的であったのはマルス神殿を含む新たなフォルムの建設であった。この頃大理石の産地であるカッラーラが発見されたため、皇帝は大理石をふんだんに使って大規模な建設を行った。そのほか、ポンデュガールの水道橋やアラパキス・アウグスタエ(アウグストゥスの平和の祭壇)などが有名である。

最後にアウグストゥス治世以降に制作されたティベリウスの洞窟の作品やクラウディウス治世の作品としてアクア・クラウディアを紹介していただきました。

roma-houkoku-3講師紹介:
■坂田 道生(さかた みちお)
千葉商科大学非常勤講師。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業、(オランダ)ライデン大学考古学部古典考古学科修士課程修了(M.A.)、筑波大学大学院人間総合科学研究科芸術専攻博士課程修了。博士(芸術学)。専門は古代ローマの皇帝美術、現在はハドリアヌスとトラヤヌス時代の美術作品を調査中。