最近の親は勝手なものだと思う。子供が邪魔だと虐待はおろか殺してしまうといったニュースも耳にする。本日の話題はそんなむごいことではないが、子供たちの将来を思うと真剣に考えざるを得ない問題である。
2月初旬、ローマの市役所にアルゼンチンで同性結婚した女性カップルが男児の認知登録に出頭した。
カップルのうち1人が相手の女性の同意を得て人工授精で出産した男児について、「2人の女性の正式な男児である」というアルゼンチンの役所が発行した証明書を基に、イタリアの役所で認知要求するためであった。
こうしたケースは、すでに北イタリアのトリノ市であった。このときは市役所側がイタリアの法律には規定がないことを理由に認知するのを拒否したが、女性カップル側が市役所を相手に裁判で争い、最終的には勝訴した。
こうした前例を踏まえたためか、ローマ市役所は認知要求を簡単に受理したのである。
ローマ市は昨年秋から、外国で結婚した同性カップルの認知を始めたため、今回の子供の認知以降、「父親だけの2人」や「母親だけの2人」による子供の認知届が急増する可能性が大きい。
イタリアだけの問題ではなさそうだ。
坂本鉄男
(2015年3月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)