昔のヨーロッパのように戦乱続きだと、平時でも価格が安定し、いざというときに持って逃げられる「金」が財産として最適であった。この習慣は、現在の各国の外貨準備にも反映されているような気がする。
世界一の金保有国の米国は、外貨準備のうち金が占める割合は75・1%の8133トンと別格だが、2位のドイツは71・9%の3395トン、3位のイタリアは71・3%の2451トンで4位のフランスとほぼ同じ。
これに対し、世界1位と2位の外貨準備高を誇る中国と日本はドルが大部分で、金保有量は1・6%の1054トンに3・1%の765トンと少ない。以上は各国の中央銀行が保有する金の量だが、個人が持つ金の量は計り知れない。
イタリアでは不況が始まった2008年以来、町の各所に「金買います」の看板が目立ち、個人が生活のため金を売り払っている。その量は08年が約41トンだったのが年々増加し、13年には200トンに達したという。これらの金は延べ棒にしてヨーロッパ諸国に輸出されているが、13年には総額80億ユーロ(約1兆1200億円)に及んだ。
昔から、ヨーロッパの古い国の富の蓄積は大きいといわれてきたが、今回、図らずも、イタリアの国の中に“金鉱”がいくつもあるのが発見されたわけだ。
坂本鉄男
(2014年9月21日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)