今年6月、39年間にわたりスペイン国王の座にあったフアン・カルロス1世が退位し、フェリペ皇太子がフェリペ6世として新国王の座についた。
スペイン王家はヨーロッパの中でも最古級の家柄だけに、伝統的に継承され即位に際して読み上げられた称号は、約50にのぼったという。
中にはエルサレム王、東インド・西インド王から神聖ローマ帝国辺境伯まであったというから、スペイン王家史を読み上げたのと同然だったらしい。
さて、その中で一部のイタリア人を驚かせたのは「オリスターノ侯爵」の称号だ。オリスターノとはサルデーニャ島中部の小都市。この称号はかつてブルボン王家がサルデーニャ島を領有したときの名残であり、立派な紋章も残っている。
市民らは、万が一にもフェリペ国王が訪問したら、「われらが侯爵さま」と呼ぶべきかどうか冗談交じりに話題にしているらしい。
称号を誇示しない例もある。旧イタリア王家サボイア家の直系男子、エマヌエレ・フィリベルト氏はテレビなどにも出演して人気を集めているが、彼がベネチア皇太子とピエモンテ皇太子の称号を持つことはイタリアでもほとんど知られていない。気取らなさが人気の秘密なのかもしれない。
坂本鉄男
(2014年9月14日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)