グァルティエーロ・マルケージ氏は、イタリアの名シェフ中の名シェフとして世に知られる。
1977年に北部ミラノに自分のレストランを開き、翌年にはミシュランの星を獲得。85年にはイタリアのレストランで初めての三つ星を獲得した。その後、ミシュランの採点法に異議を申し立て、93年からはワインの名産地、フランチャコルタでミシュランの星とは縁を切ってレストランを経営している。
金箔(きんぱく)を散らしたリゾットなど、世界的に知られる名料理を生み出したシェフの挑戦欲は、84歳になった今も衰えを知らないようだ。
この6月には初めてスカイダイビングに挑戦。インストラクターに抱かれながら降下するタンデム方式だったが、彼の印象に最も強く残ったのは、小型機の扉が開かれ、「降下」の指示を受けた瞬間だという。
小型機から飛び降り、約50秒間、時速150キロものスピードで降下し、パラシュートで空中を旋回して芝の上に降り立った。
マルケージ氏はその時間の短さに驚いた一方で、即座に「もう一度スカイダイビングに挑戦しよう」と心に決めたという。
無理をすべきだとは思わないが、何かに絶えず挑戦しようとする精神の大切さを強く感じさせられた。
坂本鉄男
(2014年9月7日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)