こんにちは。暦の上ではそろそろ秋も近づいてきたとはいえ、まだまだ暑い今日この頃。みなさん元気にお過ごしでしょうか?
今回のお便りは暑さも吹き飛ばすような清涼感いっぱいのハーブ、ミントについてお便りします。
ミントは600種を超えるともいわれるシソ科ハッカ属のハーブの総称で、日本ではハッカ(薄荷)とも呼ばれてきました。馴染みの深いものには、ペパーミント(セイヨウハッカ)やスペアミント(ミドリハッカ)などがあります。20世紀初頭には日本が世界一のミント生産量を誇っていたとも言われ、ミントは私たち日本人とも深いつながりをもつハーブです。 ミントはヨーロッパ、アジア、アフリカと広い地域に生息し、古今東西、生活のさまざまな場面で用いられてきました。古代エジプトでは、ピラミッド建設の労働者の食事にミントが供されたり、ミイラの下にミントが敷かれたりしていたと言います。また、媚薬のような効果があるとされていたため、古代ローマの兵士は戦争の前に摂取することを禁じられていたとも伝えられています。
イタリアではミントはmentaと呼ばれ、menta piperita(ペパーミント)やmenta romana(スペアミント)などを筆頭に種類はさまざま。現在も歯磨き粉、湿布薬、スイーツ、ガム、ジェラートなど、色々な用途で使われています。mentaに縮小辞をつけてmentinaと呼ばれているのは、ミントとお砂糖でできたタブレット状の飴。乾燥した葉を使ったtè alla menta(ミントティー)は、フレッシュな香りでリラックス効果があるだけでなく、消化を助けるとも言われています。ミントの葉をふんだんに使ったカクテルmojito(モヒート)はヘミングウェイもこよなく愛したと言われますが、イタリアのバーでも人気のあるドリンクです。 イタリア語mentaの語源をめぐっては諸説ありますが、ラテン語のmĕnthaがギリシア語のμίνϑηと似ていることから、ギリシア神話の妖精メンターにちなんでいるという説が広く知られています。冥府の神ハーデスに愛されたメンターは、ハーデスの妻ペルセポネによって草に変えられてしまい、この草がミントの語源になっているというものです。
さて、最近日本では餃子にまで使われる大人気のミントですが、イタリアのキッチンでも大活躍するハーブです。例えば、簡単に作れるミントペーストは、いつもと一味違った爽快感を食卓にプラスできる万能選手。ミントの葉、松の実、エクストラバージン・オリーブオイル、塩、こしょうをミキサーで混ぜるだけで、グリルした魚やカルパッチョ、焼いたお肉にもよく合うソースになります。松の実をアーモンドに変えるとまろやかに仕上がり、グリルした野菜にもピッタリ。また、ドライトマトなどと一緒にパンにのせれば簡単なアペリティフにもなります。
シチリアでは、La menta ti calma il cuore(ミントは心を落ち着ける)ということわざがあるようですが、秋までもう一息、美味しいミントペーストで心も体もクールダウンしながら爽やかに過ごしてみてはいかがでしょうか?
ヴァンジンネケン 玲