こんにちは。新緑がまぶしく、晴れた休日は外で過ごすのが気持ちのいい季節になってきました。
出会いの春に別れの春にと中々せわしない時期ですが、みなさん元気にお過ごしでしょうか?さて、今回はalloro(月桂樹)をテーマにお便りしたいと思います!
ベイリーフ、ローリエ、ゲッケイジュなどの名で呼ばれ、主に料理で使うベーシックなハーブとして親しまれている月桂樹の葉。日本には20世紀初頭に月桂樹の木が輸入されたと言われています。
そして、日露戦争中に旅順開城を祝って東郷平八郎が日比谷公園に月桂樹を植えたことをきっかけに、その名が広まったようです。(「月桂冠」の酒銘が商標登録されたのも同時期です。)
さて、この月桂樹。小アジア原産の常緑樹で、古くから地中海北部沿岸の地域で栽培されてきました。イタリアでは中部から南部にかけて自生し、昔からシチリア料理でよく使われるハーブであったことから、現在はイタリア政府によってシチリアの特産物に指定されています。
その用途は多岐に渡り、肉や魚に風味付けのハーブとして用いられることはもちろん、洋服ダンスの虫よけ、本や羊皮紙の保存剤、消化促進作用のある食後酒、咳止めなどとして用いられています。
古代ギリシアやローマでは、月桂樹はアポロの聖樹とされていました。オリンピック競技の優勝者や偉大な詩人は、知恵、勝利、栄光を象徴するシンボルとして月桂冠laureaを頭上にいただきました。
この風習は中世やルネサンス期のイタリアでも踏襲され、月桂冠を被ったダンテやペトラルカの肖像画が残されています。イタリアの大学を卒業したホヤホヤの学士が今も月桂冠を被るのは、その名残です。また、イギリスには現在もこの風習が制度として残り、英国王室はワーズワースなど第一流の詩人に桂冠詩人poeta laureatoの称号を与えています。
イタリア語で月桂樹を意味する名詞alloroは、ラテン語で月桂樹を意味する名詞 laurusに指示代名詞のついたilla laurusという表現から派生したと言われています。
古くからalloroが栄誉や成功のシンボルであることから、イタリア語では勝利や名誉ある賞などを指す名詞としても使われます。
例えば、riportare/conquistare l’alloro(月桂樹を勝ち取る)という表現は、「勝利を手にする」という意味になります。一方、dormire/riposare sugli allori(月桂樹の上で眠る)は、成功に満足してその後を無為に過ごすこと。温かな陽気についつい眠気もさそわれますが、どうやら月桂樹の上では眠らないほうがよさそうですね!
ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン玲