坂本鉄男 イタリア便り 女性阻む騎士道精神

 去る3月8日は「国際女性デー」だった。イタリアの新聞の多くは、女性の社会進出についての記事を掲載していた。それによると、北欧諸国に比べ、イタリアを含む南欧諸国の女性の社会進出の度合いは、かなり低いという。

 イタリア国会での女性議員の割合は、下院が31%、上院は29%で一見多そうだ。だが、これ以上の女性議員増を望まない男性議員が多いらしく、下院を最近通過した選挙法改正案では、女性議員たちの主張した選挙での男女同権案が骨抜きにされてしまった。

 企業での女性執行役員の数も、北欧の25%以上と比べてイタリアではわずか8%と少なく、しかも家族経営的な中小企業に女性執行役員が多い。また、イタリアの銀行で女性執行役員がいるところもわずかで、男性優位が目立つ。

 こうした男性優位社会の背後にあるのは昔、南欧を中心に栄えた「か弱い女性を守る」ことを本分とした騎士道精神かもしれない。

 一方、同じように男性上位の武家社会の歴史を持つわが国では最近、人事院総裁に女性が起用され、野村ホールディングスでは、女性執行役員が傘下の信託銀行の社長に就任することになった。有能な女性の登用はわが国の発展に欠かせないものだけに、喜ばしい。

坂本鉄男

(2014年3月23日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)