坂本鉄男 イタリア便り

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坂本鉄男 イタリア便り 贋作も手ごわい

 レオナルド・ダビンチ作とされる「若きモナリザ」の真贋(しんがん)が話題になっているが、多くの世界的美術品が生まれたイタリアだけに、おいそれとは見分けのつかぬ贋作(がんさく)の歴史も長い。 たとえば、先ごろも2008年に国がトリノ市の古美術商から325万ユーロ(約3億3500万円)で買い上げたミケランジェロ作とされる木彫りの小さな「キリストの磔刑(たっけい)」像が話題となった。 購入価格について会.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り ローマ法王の執事

 1週間ほど前、本紙に「ローマ法王の元執事が秘密書類を不正入手し外部へ漏洩(ろうえい)した件でバチカンの裁判所から18カ月の禁錮刑を言い渡された」とのニュースが掲載された。では「執事」とはどんな役なのだろうか。 「執事」とは英語の「バトラー」、つまり、「お金持ちや貴族などの館で主人たちの身辺の世話をする給仕頭」のことだ。だが、今回は「法王の身の回りの世話をする部屋付き男性召使い」を意味する。 ロー.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 青い目

 幼いとき、「赤い靴履いてた女の子」の童謡を歌った思い出のある方はもう後期高齢者だけかもしれない。その3節に「今では青い目になっちゃって、異人さんのお国にいるんだろう」とある。詩人、野口雨情が1921年、ある北海道開拓移民の不幸な少女の話を元にこの詩を詠んだ時代には、青い目とは異人さんの目を代表していた。 人類の目の色は、日本人の大半がそれである濃褐色から北ヨーロッパ人に多い明るいブルーまであって.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 日本の伝統料理?

 ローマでは20年くらい前までは安い中華料理店が至る所で繁盛していたが、イタリア人が安価な中華に飽き、同時に世界的な「日本食ブーム」が到来すると、ほとんどの店が争って日本料理店にのれん替えした。 コックに浴衣まがいの衣装を着せれば、イタリア人には中国人か日本人か見分けは付かない。客の多くはすしや刺し身の格好さえしていれば魚の鮮度や味の良しあしの区別がつかない。この結果、現在では、日本人の板前やすし.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 歴史の玉手箱

 バチカンのローマ法王庁機密文書館には、欧州を中心とする世界の歴史そのものが収まっている、といっても過言ではない。1612年にボルゲーゼ家出身の法王パウロ5世が、それまでの古文書を含む公文書保管のため創設したものだ。 天井まで設けられた書棚全部を横に並べると、85キロに及ぶという広大な文書館だ。当初は枢機卿しか入れなかったが、1881年からは外部の学者や研究者にも閲覧が許されている。 今年は文書館.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 盗聴の“収支”

 普通の捜査では到底解明できないマフィア組織の捜査を主目的として、イタリアでは検察官が判事の許可を得れば、犯罪容疑者の電話を盗聴することができる。だが、この盗聴がマフィア以外の捜査にも広く使われ、こともあろうに盗聴内容が報道関係者に漏れるから問題だ。例えば、ベルルスコーニ前首相の未成年女子買春容疑事件も、関係者への盗聴が証拠にあげられている。 最近、「マフィアと国家との関係」を捜査している南部シチ.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 輝く障害者選手

 ロンドンで開催中のパラリンピックで日本選手の活躍には目を見張るものがあるが、イタリア選手の中にもまれな経歴を背負った素晴らしい選手たちがいる。 第1が、陸上・伴走者付き1500メートルで銅メダルを獲得した盲目女性のアンナリーザ・ミネッティ選手(35)だ。歌手としてデビューした彼女は10代のころから眼病のため視力を失っていったが、くじけることはなかった。1997年の「ミス・イタリアコンクール」では.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 見直される古来種

 日本からの友人の便りに「野菜スープにファッロを入れて食べたが歯応えがありうまかった」とあってびっくりした。 ファッロは日本ではスペルト小麦と呼ばれるらしい。古来、中近東や地中海沿岸で栽培されてきた穀物で、日本のソバやヒエのように荒れた土地でも寒冷地でも収穫できるため、小麦の脇役として貴重な食品であった。ローマ時代には、滋養のある穀物として新婚夫婦が子供を授かるようにと豊饒(ほうじょう)の女神に供.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 存在感増す地ビール

 ビールのうまい気候が続く。暑い夕方には白ワインで一杯というより、やはりよく冷えたビールがよい。 イタリアでも近年、急速にビールの消費量が増えてきたが、2010年で年間1人当たり約27リットルと、チェコの132リットルやドイツの107リットルにはもちろんのこと、日本の45リットルにもまだまだ遠く及ばない。 11年のイタリアのビール生産量は125万キロリットルだが、国産企業は少なく、150年以上の歴.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 初代名誉総領事の死

 去る7月27日に日本の初代ナポリ名誉総領事、ミケーレ・ディ・ジャンニ弁護士が死去した。身ぐるみ剥がれた旅行者から国会議員まで、彼の世話になった日本人は数知れない。 名誉(総)領事とは、日本の領事館のない国や都市で、トラブルに巻き込まれた邦人の世話や日本との文化交流に従事するため、その地域の名士などになってもらう、ほとんど無給に等しい名誉職だ。全世界には日本の名誉領事が約80人いるが、イタリアでは.... Read more