公益財団法人 日伊協会
坂本鉄男 イタリア便り
坂本鉄男 イタリア便り 宝の持ち腐れ
2カ月以上前のことだが、法王庁の報道官ロンバルディ神父が、ミケランジェロ(1475~1564年)の自筆書簡2通がバチカン市国の古文書館から紛失していることを認めた。紛失がわかったのは18年前の1997年で、その後、泥棒との仲介役が「約20万ユーロ(約2560万円)で取り返せる」と申し出たが、当時の館長が「盗まれたものを買うことはできない」と拒否したらしい。 厳しい管理下におかれている古文.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り 親と通学、当たり前
日本では新学年が始まった。子供が小学校高学年になっても親が通学に付き添うというと、一般とは違うような家庭を想像する人は多いだろうが、イタリアではごく普通のことである。 わが家の近くの修道院経営の学校の前は毎朝付き添いの親の車で混雑する。あるとき、修道女に「日本では子供を1人で通学させるのが普通ですよ」と言ったら、大きく両手を開いて叫ばんばかりにこう答えた。 「日本は治安も交通状態もいい.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り 清貧に甘んじる
本日はカトリック教徒にとって最も重要な祭日「復活祭」である。この機会にカトリック教会の聖職者の待遇について報告したい。 ローマ法王フランシスコは、聖職者たちに清貧を呼びかけているが、聖職者の月給は決して高くない。 イタリアでは納税額の1000分の8を特定の宗教団体や研究機関に割り振ることができ、どれだけの市民が毎年6月の納税申告時にこれを希望するかによって、カトリック教会の収入が決まる.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り しのぎ削る大理石論争
バチカンのサン・ピエトロ寺院を訪れる観光客がまず見物するのはミケランジェロ(1475~1564年)の「ピエタ」像だ。死んだわが子イエスを膝にのせて嘆く聖母が表現された真っ白な大理石像は、まるで昨日彫られたように美しい。 ミケランジェロは大理石像を彫るとき、自らトスカーナ州の西部、ティレニア海を望むアプアナ山系の大理石採掘場に赴き、巨大な大理石の固まりを選別したという。 アプアナ山系は平.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り 子供の将来
最近の親は勝手なものだと思う。子供が邪魔だと虐待はおろか殺してしまうといったニュースも耳にする。本日の話題はそんなむごいことではないが、子供たちの将来を思うと真剣に考えざるを得ない問題である。 2月初旬、ローマの市役所にアルゼンチンで同性結婚した女性カップルが男児の認知登録に出頭した。 カップルのうち1人が相手の女性の同意を得て人工授精で出産した男児について、「2人の女性の正式な男児で.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り リンゴの「フジ」
今から20年くらい前からイタリアの八百屋やスーパーで売られているリンゴで最も好まれる品種の1つは「フジ」である。だが、この「フジ」が日本の青森県南津軽郡藤崎(ふじさき)町の園芸試験場で誕生し、現在世界で最も普及している品種とは誰も知らない。 先日もイタリア人の友人の家の夕食会でデザートに「フジ」が出たのでこの品種の由来を説明したら、物知りを自任する1人が、「フジ」という名から富士山の麓ででき.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り 地中海、波高し
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の問題は、シリアやイラク北部のことだと考えられてきた。しかし、最近では地中海を隔ててイタリアの対岸にあるリビアでも組織に呼応するシンパが勢力を拡大し、イスラム国はイタリアを敵国だと名指しした。イタリアにとって地中海は危険な水域へと一変した。 これまでも、リビアの沿岸からは悪徳業者が大型ゴムボートや老朽船に難民を満載し、悪天候で波浪が高く沈没することが分.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り 遠のくイタリア人法王
昔はローマ法王といえばイタリア出身者に決まっていた。実際、オランダ出身のハドリアヌス6世(在位1522~23年)以来、ポーランド出身のヨハネ・パウロ2世(同1978~2005)の選出までの455年の長期にわたり、イタリア出身者だけがローマ法王に選ばれてきた。 法王選挙(コンクラーベ)は現行選挙法によれば、80歳未満の枢機卿によって行われる。昔、イタリア人だけが法王に選出されていた時代には、イ.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り 人道主義と身代金
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」は日本政府の「卑劣なテロには屈せず」との強い態度の前に、拘束していた日本人2人を残忍な方法で殺害した。この点、テロに断固とした態度で臨む日米英とは違い、欧州連合(EU)諸国にはイタリアのように“人命優先”を選ぶ国もあり足並みは一致していない。 例えば昨年7月末、フリージャーナリストの後藤健二さんとは違った安易な「人道主義」にひかれてシリアの難民支援に出.... Read more
坂本鉄男 イタリア便り 家族経営の企業気質
第二次大戦後から今日までイタリアの輸出を支え、産業の中心となってきたのは半国営企業と家族経営の私企業であった。 家族経営企業の長所は独創性をフルに生かし、家族が団結して企業の成長を支えられることにある。半面、家族経営の弱点は2代目、3代目になって家族内で不和が生じたり、経営が悪化すると高額な買収額を提示する外国企業に簡単に身売りしてしまうことだ。 これまで身売りした企業のうち、わが国で.... Read more