坂本鉄男 イタリア便り 債務危機と“スマ婚”

 英語で「ジューンブライド(6月の花嫁)」と言うように、欧州の6月は結婚式に最適の月だ。だが、不景気の続くイタリアでは、銀行から結婚費用を借り入れる若者(18~25歳)が増え、平均の借入額は1万2500ユーロ(約160万円)だそうだ。

 このため、式の費用を節約しようと、いろいろと知恵を絞る。まず第1が結婚式の衣装だ。イタリアはウエディングドレスの大生産国であるが、1日着るだけなのに新しい衣装を作るのはもったいないと、1千ユーロ前後の貸衣装で済ませる女性が多くなった。これで貸衣装屋が乱立して大繁盛しているらしい。

 教会内の花飾りも、こんでいるときは1時間ごとに結婚式が行われるため、3組で同じ花を使えば、出費は通常の3分の1の400ユーロくらいで済ますことができる。来客への伝統的な引き出物「コンフェッティ」(砂糖菓子)も店で菓子だけを買い、自分で包むというやり方がはやっている。

 一方、結婚祝いを贈る側も不景気の影響を受けている。昔からの代表的な贈り物である銀製品を売る店では、30%以上の売り上げ減という。

 見えを張るために余計な金を使う必要はない。不景気が無駄を見直すきっかけになるのなら、決して悪いことではないと思う。

坂本鉄男
(6月2日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)