「シチリアと文学――ピランデッロを中心に」
文化的に多様な顔を持つイタリアにあってシチリアはひときわ複雑である。そのシチリアの歴史と文化をより掘り下げて知る機会を持つために企画された連続文化セミナー『文明の交差路~シチリア』は、第4回として、5月11日(土)に、「シチリアと文学――ピランデッロを中心に」と題して、慶応義塾大学元教授の白崎容子先生に文学のお話を伺った(参加者24名)。
続いて、リソルジメント以後において、シチリアは多くの作家を輩出したことが紹介された。リソルジメントから取り残されたシチリアの作家は、シチリア固有の題材を用いて多くの作品を書くが、やがてイタリア本土、さらにヨーロッパ、世界各地へとその活動は拡大していく。主な作家とその主な作品として、ジョヴァンニ・ヴェルガ(「カヴァレリア・ルスチカーナ」)、デ・ロベルト(「副王家の人々」)、トマージ・ディ・ランペドゥーサ(「山猫」)、レオナルド・シャーシャ(「小さなマフィアの話」、「真昼のふくろう」)などがある。イタリアのノーベル文学賞作家は6人いるが2人がシチリア出身である(ルイージ・ピランデッロとサルヴァトーレ・クワジーモド(詩人))。
さてお話の中心は、ルイージ・ピランデッロの人と作品について、5つの項目に分けてのお話であった。①「動物」を主体とした作品(「ミッツァロのカラス」、「跳びはねる馬」②土とともに生きるシチリアの人(「誘拐」、「月をみつけたチャウラ」)、③職人魂vs規制社会の枠(「壺」)、④シチリアの歴史、⑤作者のシチリアによせる想い、のそれぞれの作品の梗概や作品の持つ意味などについて詳しく語っていただいた。さらにアントニオ・タブッキなど後世の作家たちへの影響について述べられた。
全体を通してピランデッロを中心にシチリアの作家たちが発するシチリアという世界の土の香りが豊かに感じられる講演であった。