坂本鉄男 イタリア便り 「13番」がない

 31日はキリスト教ではクリスマスと同じくらい重要な祭日の復活祭(イースター)である。イエス・キリストが金曜日に十字架にかけられて死んでから3日目に復活したことを祝う祭日である。
 キリストは、はりつけに処せられる前日の木曜日に、弟子13人と食卓を共にしたとされる。この13番目の弟子がキリストを裏切りユダヤ人にお金で売ったユダだとされることから、数字の13はイタリアではさほど気にしないものの、英国や米国では忌み嫌われる。
 日本で忌み数字の4や9が病院などで使われないのと同じように、英米の病院の病室ではもちろんのこと、多くのレストランでも13番席がない。また、航空機の座席も13列や13番を置かない航空会社もあるし、高層ビルでも13階を12階Bと呼び名を変えているところまである。
 これに加えて、金曜日はキリストがはりつけになった日とされることから「13日の金曜日」は厄日中の厄日というわけだ。実際、中世のヨーロッパで莫大(ばくだい)な富と勢力を築いたテンプル騎士団がフランス王フィリップ4世に異端の難癖をつけられ指導的騎士らが逮捕されたのは1307年10月13日の金曜日。その後、騎士の処刑と全財産の没収により、騎士団は滅亡へと追い込まれた。
坂本鉄男
(3月31日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)