1979年に起きたスリーマイル島原発1基の事故で、汚染除去だけで当時の金額で約10億ドル、除染終了までに14年を要した。福島第1原発事故の場合は原子炉が4基あるだけに最終処理までの費用と時間は見当がつかず、それに伴う損害賠償額を含めると10兆円をはるかに上回るとも言われる。
1月中旬、トスカーナ沖の小島で座礁し、現在も横倒しになったままの巨大豪華客船の事故は、3千人以上の乗客85%について、船会社が提示した1人当たり1万4千ユーロ(約150万円)の賠償と旅行費用の返還で同意が得られる予定だという。
だが、事故賠償ではハゲタカのような弁護士が活躍する米国の乗客約130人は話が別だ。すでに6人の乗客が弁護士を通じ船会社に4億6千万ドルもの賠償を求めている。死者への賠償などを含めると、どのくらいの金額になるか予想もできないらしい。
現在燃料の抜き取り作業はほぼ終わりに近づいたが、船体の解体処理方法はまだ検討中である。割れ目をふさぎ浮上させて解体場所まで曳航(えいこう)できれば最上だが、この費用も莫大(ばくだい)らしい。
人類は科学の助けを借りて「大きければ大きいほど経済効果も大きい」と考えてきたが、今後は「小さい方が安全」との消極的な考えがはやるのではなかろうか。
坂本鉄男
(3月4日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)