坂本鉄男 イタリア便り バレリーナのスタイル

 「私はバレエの教師にモッツァレラと呼ばれ、体重を43キロに落とすためリンゴとヨーグルトだけのダイエットをさせられました」

 これは、イタリアのトップクラスのバレリーナ、マリア・フランチェスカ・ガッリターノさん(33)の告白である。モッツァレラとはご存じのように、イタリア産の水牛の生チーズで、つき立ての餅のような外見をしている。

 彼女は、16歳でミラノのスカラ座付属のバレエ学校に入り、狭き門を突破して総勢80人のバレエ団の一員となり、ソリストまでたどり着いた。しかし、数年前から自分の体験をもとに、節食を強いるバレエ教師や拒食症に悩む同僚の話などを“告発”するようになった。スカラ座批判とも取れる発言で、ついにスカラ座当局からソリストの座を解任された。

 彼女のこうした批判に対し、いろいろな反響があったが、スカラ座の元名プリマのカルラ・フラッチさんは「バレリーナとは大変な重労働の職業で拒食などとんでもない」と批判的だ。

 だが、モデルやバレリーナのようにスタイルの良さを要求される職業では節食もやむを得ないのではないか。「白鳥の湖」を踊る美しいバレリーナたちをみるとき、彼女らの隠れた苦労も評価するのは決して悪いことではない。

坂本鉄男
(2月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)