坂本鉄男 イタリア便り 犬や猫の身になって!

 ペットを飼った経験のある方や現在飼っておられる方はお分かりだろうが、犬や猫たちは花火が大嫌いで、あの爆発音に震え上がって縁の下や部屋の隅に逃げ隠れ、縮こまってしまう。

 イタリアの大みそかは新年と同時に、テラスや窓から一斉に花火を上げ、さらに、爆竹を道路で鳴らす伝統があり、犬猫にとっては最悪の日である。

 今年の元旦もナポリやローマなどでは昔ほどではないにせよ、盛大に花火が打ち上げられ、爆竹が投げられ、2人の死者、重軽傷者500人以上を出した。

 しかし北イタリアのトリノでは違っていた。12月下旬に市が条例を制定し、「犬や猫を脅かす爆竹の禁止」を決めたのだ。違反の程度により25ユーロ(約2450円)から500ユーロ(約4万9千円)の罰金が科され、悪質なケースは刑事告発されるという厳しい内容だ。

 トリノでは動物愛護に関する条例も整備されている。「レストランへの飼い犬の連れ込み」も、レストラン側が正当な禁止理由を表示している場合を除き、飼い主が口輪をはめるなどの適切な措置を取っていれば、許可している。さらに、「飼い犬同伴可能」なホテルも他の都市と比べて、ずっと多い。犬や猫にしてみれば「どうせ飼われるならトリノで」と思うに違いない。

坂本鉄男
(1月8日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)