クリスマスが近づくにつれ、ローマのあちこちで店を広げるクリスマスツリー専門の露店が最後の売り込みに拍車をかけている。
昔は、特に中部イタリアから南部では、クリスマスツリーより人形や模型を使ってイエス誕生の場面を再現する「プレゼピオ」が盛んであったが、時代の波に押され、今ではアメリカ式のクリスマスツリーが主力になってしまった。
今年末、全国で売られるクリスマスツリーは1千万本で、40%がプラスチック製、残りは本物のモミの木だそうだ。つまり年に1度のお祝いだけに本物志向が強く、600万本ものモミの木が売られることになる。
もちろん、これだけのモミの木がイタリアの山から切り出されるわけではない。イタリア産は20%で、あとは50%がドイツから、30%がスカンディナビア諸国から輸入される。
イタリア産の90%は、トスカーナを中心とする専門種苗業者約1千軒が出荷する根のついたモミの若木で、残りの10%は伐採された枝が利用されているという。値段は高さ1メートル前後のものなら20ユーロ(約2千円)からあるが、2・5メートルのものになると一気に100ユーロ以上に跳ね上がる。だが、不況を吹き飛ばすためなら、このくらいの出費はガマンガマン。
坂本鉄男
(12月11日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)