高級ホテルの特別メニューと言っても、ここではホテルのレストランの特別メニューとは関係ない。レストランとは無関係の客室のベッド用「枕のアラカルト・メニュー」である。
ホテルの枕の下は、「007」やマフィアがピストルを隠す場所であり、わが国でも昔、「枕探し」の言葉があったように財布をしまうところでもある。だが、本日は枕本来の役割に関することだ。
最近、ローマの高級ホテルでは客サービスに「枕作戦」がはやり出したそうだ。確かに、宿泊客にとって旅先のホテルで安眠できるか否かは枕の具合によることが多い。これを解消するために客の希望に合った枕を提供しようという作戦である。
中には10種類以上もの枕のメニューを用意しているホテルもあるという。いくつかを挙げると、クラシックな「ガチョウの羽根詰め枕」や「超高級羊毛詰め枕」から始まり、日本古来の「そば殻詰めの枕」からヒントを盗んだのではないかと思われるような「アワ、ソバ、スペルト小麦詰め枕」や首筋の凝りや痛みを解消するとの能書き付きの「サクランボの種詰め枕」などさまざまだ。
選択に迷って、安眠どころか枕が気になって秋の夜長を一晩中悪夢に悩まされませんように。
坂本鉄男
(11月20日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)