今年は7月21日が「土用の丑の日」。イタリアにもウナギ料理はあるものの、日本人の舌には「かば焼き」が最高である。
イタリアのウナギの主要産地は、アドリア海に注ぐ北部ポー川下流域のコマッキオが有名だが、ウナギの漁獲高は年々減り続け、30年前の年間20万トンに比べ、現在はその10分の1にまで激減しているという。
また、この地方でも日本と同じように天然ウナギは少なく養殖ウナギに頼っているのが現状だ。稚魚の乱獲により、その養殖も困難になっているという。
日本と欧州のウナギは産卵地域と幼魚の成育地域が全く異なる。日本ウナギの産卵場所はマリアナ諸島の西側と推定されている。一方、イタリアの天然ウナギは、ポー川下流域で6、7年ほど生息し、約1・5キロの大きさに成長してから産卵のために1年ほどかけて、数千キロの長旅に出かける。
まず、地中海を泳ぎジブラルタル海峡を抜け、大西洋を横断。北米大陸のサルガッソ海にまで到達し、アメリカやヨーロッパ各地の河川から来たウナギと同様に深海で産卵する。
イタリアのウナギはそこの海域で稚魚に育つと、再び親の故郷ポー川をめざし、また長旅を始めるわけだ。かば焼きを食べるときにウナギ親子2代の長旅を思い出すのも一興だろう。
坂本鉄男
(7月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)