坂本鉄男 イタリア便り 教育予算削減の影響

 修学旅行が学校生活の楽しい思い出の一つとなるのは洋の東西同じである。

 ところが、イタリアでは緊縮予算が組まれた影響で、文部省予算が80億ユーロ(約9400億円)削減されたため、修学旅行を引率する教師の日当12ユーロが支払えなくなってしまった。

 ただでさえ、目を離せない年頃の生徒を引率するのは神経を消耗する。それにもかかわらず、わずかな手当も受け取れないとなれば、教師たちが憤慨するのも無理はない。結果、多くの学校で教師の引率拒否にあい、今年度に全国の学校で計画されていた修学旅行の3分の1が中止される羽目に陥ってしまった。

 もちろん、最大の被害者は生徒たちだが、別の大きな被害者は旅行代理業やホテル業者、土産販売店など観光業に携わる人たちである。

 昨年度、修学旅行関連の売り上げは、不景気の影響を受け前年度比9%減だったものの、総額3億4千万ユーロに達した。イタリアでは、日程の長短や距離により違いはあるが、1人当たりの平均旅費は175ユーロ、お土産などに1人130ユーロの金額を充てるという。

 そればかりではない。旅行に際し、新しいカメラや携帯電話などを買い替えてやる親も多い。教育予算削減は思わぬ先にも悪影響を及ぼしているのである。

坂本鉄男
(6月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)