東日本大震災の発生直後の3月13日、東京の親戚から「本日、緑茶とつくだ煮入りの小包を航空便で送った」との連絡があった。だが、なかなか到着しない。盗まれたものと諦めかけていたら、5月6日になってジェノバ港の港湾衛生局から1通の書留が届いた。
いわく「4月26日、港湾駐在医務官および郵政局の係員の立ち会いのもとに、貴殿宛てに東京から送られた小包を開封し内部の食品を検査した結果、放射能汚染の疑い有りとの結論に達し、小包の送り主への返送を決定した」とある。
冗談ではない。親戚は3月11日前に小包を用意していたが、大地震のため2日遅れで郵送したのだ。また、4月26日に検査したとあるが、それまでどこで保管されていたのだろう。
震災前に購入された食品が放射能に汚染されていたという話もあり得ない。結局、3月15日前後にはイタリアに到着した小包はどこかに隔離されていたとしか考えられない。福島第1原発からの放射能汚染を恐れ、多数の在日外国人が慌てて離日したのと同じ理由が考えられる。
だが今になり、津波到達後の比較的早い段階で核燃料が溶け落ちるメルトダウン(全炉心溶融)が1号機で発生していたことを考えると、在日外国人が離日したのもあながち間違いではなかったといえる。
坂本鉄男
(5月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)