5月1日は、共和国憲法第1条の冒頭で「イタリアは労働に基礎を置く民主的共和国である」とうたっているだけに昔から労働者の祭日であり、国民の休日である。
だが、今年は「メーデーの祭典」以外に、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂で故ヨハネ・パウロ2世の列福式(聖人の前の段階の福者に叙せられる式)が行われ、世界各国から信者約100万人の参列が予想されている。
ヨハネ・パウロ2世、本名カロル・ヨゼフ・ヴォイティワ氏は、1978年10月に法王に選出されたが、彼はオランダ出身のハドリアヌス6世から実に455年ぶりの非イタリア人法王であり、同時に史上初のスラブ系法王であった。
20年5月18日にポーランドのクラクフ市近郊で生まれ、若い頃はナチス・ドイツの侵攻、次いで戦後の共産政権による支配といった過酷な時代を故国ポーランドとともに過ごした。
また、法王時代も81年5月、サン・ピエトロ広場でトルコ人のテロリストの狙撃を受け、重傷を負うなど波乱に満ちた人生を送られた。だが、反共主義者、博愛主義者、平和主義者として、最近の法王の中では最も愛され、死後直ちに聖人を望む声が強かった。本日、聖人への道の最終段階に一歩近づいたわけである。
坂本鉄男
(5月1日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)