坂本鉄男 イタリア便り ピュア・チョコレート

 明日は聖バレンタインデー。恋人にチョコレートを贈り、一緒に食事して赤ワインを飲むカップルにはうれしいことだが、チョコも赤ワインも、がんや動脈硬化の原因の一つとなる活性酸素を抑えるポリフェノールをたくさん含んでいる。

 一般にチョコレートと呼ばれている固形のチョコは、1820年に英国で発明され、それまでチョコレートといえば飲み物、現在の「ココア」の一種だった。仏王妃のマリー・アントワネットがお抱えのチョコレート職人に作らせたものも、モーツァルトのオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」に登場するものも、“飲料チョコ”だった。

 イタリアは欧州連合(EU)加盟国でも、食品に関する規則が厳しい。中欧諸国ではブドウ酒の発酵を助けるための砂糖添加が許されているが、イタリアでの使用は禁止されている。

 EUが2000年、チョコのカカオバターの含有を減らし、5%の植物性油脂の添加を認めたのに、イタリアは反対。同国のチョコはカカオ35%、カカオバター18%以上で、他の植物性油脂は混入していない「ピュア(純粋な)チョコレート」を誇ってきた。

 だが、最近、EUの裁判所から規則違反と中止勧告を受けた。「イタリア料理が健康に良い」と言われるのも一理あるわけだ。

坂本鉄男
(2月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)