坂本鉄男 イタリア便り ビールと女性

 蒸し暑い日本の夏だが、会社帰りに同僚らとビアホールで飲む1杯を楽しみにしているひとも多いだろう。

 ワインの一大生産国のイタリアでも、近年ビールの消費量が特に若者と女性を中心に急速に伸び、最近の有力日刊紙によると15歳以上のイタリア人の64%が、ワイン以外にビールも飲むようになったという。

 しかも、そのうち、42%が女性で、特に夏は、家に友人たちを夕食に招くとき、2人に1人の女主人はビールを勧めるというから、ビール会社にとっては朗報だ。

 イタリアのサラリーマンには、会社帰りにビアホールや酒場でビールを1杯というような習慣はないから、やはり家庭内での消費が重要なわけだ。とはいえ、イタリアの1人当たりの年間消費量は28リットルで、ビール大国チェコの156リットルの5分の1、日本と比べても半分である。

 ここで今後のビール業界発展を背負って登場するのは、女性ソムリエならぬビールの女性テイスター。例えば、オランダのハイネケンビールの北伊ベルガモ県の工場では、15人のテイスターのうち5人が女性だという。女性テイスターの味覚・嗅覚(きゅうかく)の方が男性より味の細かい特徴などを的確に感じ取るそうだ。今に飲む方もテストする方も女性が主力になるかも。

坂本鉄男
(8月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)