イタリアの公衆電話ボックスは1962年2月に北部のミラノの中心部に設置されたものが最初である。
だが、最近のように猫もしゃくしも携帯電話を持つようになると公衆電話ボックスの利用者は激減する一方だ。
電話ボックスの利用者減の原因には、携帯電話の普及のほかに、コインを狙って料金箱を破壊する悪徳漢が横行したため、たばこ屋でしか買えないプリペイド式電話カード制が導入されて不便になったことも挙げられている。
電話ボックスを管理するテレコムイタリアの調査によると、イタリア全国にある13万カ所の電話ボックスのうち27%は1日3通話しか利用されず、54%に至っては1日わずか2通話以下であり、しかも、この維持費用に年間、数千万ユーロの巨費が費やされる。
これでは、テレコムが電話ボックスを撤去したいのも当然で、今年は手始めに3万台の撤去を申請した。
ところが申請を受けた公共通信保護委員会は、撤去予定の各電話ボックスに告示をはり、利用者の意見を集めることを命じたのである。
また、病院、刑務所、小中学校、50人以上の兵士のいる兵営、携帯電話の届かない山の避難小屋などの電話ボックスは残すように命じた。
今年中に3万台の撤去に成功すれば、来年以降も年に3万台撤去の予定だが「来年のことを言うと鬼が笑う」かどうか。
坂本鉄男
(6月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)
(6月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)