身近な話題をも上質の文体に包み込む須賀敦子の魅力は、没後 20 年余りを経てなお、色あせることがありません。 存命なら今年 90 歳。ひょっこりこの世にもどってきたら、ミラノの街角で自分の足跡をたどる日本人旅行者の姿にえっ?とまん丸にした目を、やがて笑顔に包みこむことでしょう。 持ち前の知性でとらえた「別の目のイタリア」を、彼女の人となり、日本語⇔イタリア語双方の膨大な翻訳、晩年 10 年足らずで開花させた作家としての仕事を軸にさぐります。 |
「この人の作品に出会わなかったら、自分は一生、ものを書かなかったかも知れない」と言わせるほどに須賀を魅了し、彼女の前に作家への道を開いたものは何だったのでしょうか。 ユダヤ系としてファシズム時代を生きたナタリア自身の家族を登場人物とするこの自伝的小説と、その直前に出版されたエッセイ集『小さな徳』では、文の流れもリズムも大きく異なります。 母親となって筆をとった『小さな徳』が『ある家族の会話』とは異質の説得力で読者を惹きつけるのは、10代で小説を書き始めた頃の「男のように書きたい」想いが、感情に流れることのない文体となって息づいているからかもしれません。ナタリアのさまざまな声の彩(あや)に耳を傾けてみたいと思います。 | ミラノ時代に夫ペッピーノから「きみ向きの本」と渡されて夢中で読んだナタリア・ギンズブルグの新刊書 Lessico famigliare。日本語に翻訳したい!との熱い想いは、 20年後に『ある家族の会話』となって実を結びます。
<講師プロフィール> 白崎 容子(しらさき ようこ) |
申込名 | 開催日 | 時間 | 会場 | 参加費 | 備考 | |
SUGA -6 | 10/19(土) | 17:00 ~ 18:30 | ゲーテインスティツゥート 東京2F207 セミナールーム | 会員 | 2,000円 | 終了 |
受講生 一般 | 3,000円 |
※こちらの連続文化セミナーは全 6 回、すべて同じ時間帯・受講料・会場で開催いたします。
申込名 | 回数 | 開催日 | テーマ | 講師 |
SUGA-1 | 第1回 終了 | 4/20(土) | 序論 - 日本の須賀敦子 ・須賀敦子のイタリア | 白崎 容子 (元慶応義塾 大学教授) アンドレア フィオレッティ (東京外国語大学 特任准教授) |
SUGA-2 | 第2回 終了 | 5/18(土) | 須賀さんの思い出 ― その足跡をたどりながら | 木村 由美子 (河出書房新社 編集者) |
SUGA-3 | 第3回 終了 | 6/22(土) | 須賀敦子と翻訳 - 日本とイタリアを 往還する眼差し | アンドレア・ フィオレッティ (東京外国語大学 特任准教授) 高田 和広 (日伊協会講師) |
SUGA-4 | 第4回 終了 | 8/3(土) | 須賀敦子を魅了した 現代イタリアの作家(1) アントニオ・タブッキ ~ 境界の喪失 ~ | 森口いずみ (東京外国語大学 講師) |
SUGA-5 | 第5回 終了 | 9/14(土) | 須賀敦子を魅了した 現代イタリアの作家(2) エルサ・モランテ ~ 語りの魔術師 ~ | 北代 美和子 (翻訳家) |
SUGA-6 | 第6回 終了 | 10/19(土) | 須賀敦子を魅了した 現代イタリアの作家(3) ナタリア・ギンズブルグ ~「作家」須賀敦子への道を ひらいたもの~ | 白崎 容子 (元慶応義塾 大学教授) |