「スペイン階段」の通称で親しまれるローマの観光名所の一つ「トリニタ・デイ・モンティ教会の大階段」で7月5日から、市条例により、腰をおろすだけで250ユーロ(約3万円)、飲食物などで故意に汚した場合は400ユーロ(約4万7,000円)の罰金が科せられることになった。
この大階段は、毎年春になると植物園から運ばれる美しいツツジの大きな植木鉢が並べられ、夏の夜にはファッションショーが開かれるなど市民を楽しませる場所であった。
有名ブティックの寄付により、大階段は最近、修復、清浄されたばかりだったが、階段上で野宿をしたり、階段に座って飲食した後で片付けもせずに立ち去る者が激増している。
近年、イタリアでは、格安航空運賃の普及による大観光ブームと世界的な若者の行儀の悪さを背景に、名所旧跡が心ない観光客によって傷つけられたり、汚されたりする事例が各地で報告されている。この大階段もその一例だといえる。
市当局は緊急対策として罰金導入に踏み切ったのだが、多言語で表記された禁止条例の掲示板が不足していることから、いざこざの発生が指摘されている。
東京五輪・パラリンピックを1年後に控え、観光客の増加を見込む日本の市町村にとっても、教訓となりそうな点があるのではないか。
坂本鉄男
(2019年8月20日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)