ローマのサンタ・チェチリア管弦楽団大ホールで先月、世界最高峰のピアニスト、マルタ・アルゲリッチ女史が総監督を務める「別府アルゲリッチ音楽祭」の20周年記念公演が開催された。同女史や名チェロ奏者、ミッシャ・マイスキー氏らを迎え、2,800人収容の会場を超満員にする大成功を収めた。大分県主催の観光・物産展も開かれ地元メディアで紹介された。
大分とローマに縁があるとすれば約40年前のことを思い出す。大分市の高崎山でサルが増え過ぎ、最小の集団が他の集団のいじめで絶滅状態に陥った。当時、市がサルの引受先を探していることを在ローマ日本大使館から聞いた私は、親友でローマ市立動物園園長のブロンジーニ博士に相談した。園長らの尽力で約30匹の受け入れが実現した。
縁はあるにせよ友好・姉妹都市の関係を結んでいるわけではないローマ市での公演が成功したのは、大分県と別府市がアルゲリッチ女史を大の大分・別府好きにして、20年間演奏会を続けた努力のたまものだ。
日本には外国人が目を見張る風光明媚な観光地や施設完備された名温泉が多いが、日本人はとかく内向的であるせいかアピールが弱い。来年の東京五輪・パラリンピックを機に各地方を愛好する外国人を増やす積極的な海外発信を期待する。
坂本鉄男
(2019年1月15日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)