日本からイタリア旅行に来た友人が言った。「お土産にと思って、食料品店でサラミソーセージをくれと言ったが、通じなかった」
それもそのはず。イタリア語で「サラーメ」というサラミと「サルシッチャ」というソーセージは、豚肉が原料なのは基本的に同じだが、作り方も食べ方も違う「別物」だからだ。
サラミの歴史は古い。豚肉のいくつかの部位を細かくきざんで塩(サーレ)を入れて豚の腸に詰め、乾燥させて長持ちさせる。古代ローマ時代以前に考えられたイタリア発祥の製法だ。
使用する豚肉の部位や混ぜ込む香辛料などの違いで、ミラノ風サラミや、ナポリ風サラミといった地元伝統の味が生まれた。
一方のソーセージ。豚のひき肉に塩と香辛料を入れ腸に詰めたものだが、そのままでは食べられない。焼いたり茹(ゆ)でたり、調理する必要がある。日本でいう「生ソーセージ」のことだ。
フランクフルトやウィーンなど、欧州の地名がついたソーセージが日本では有名だ。ただ、日本で「ボローニャ(ボロニア)ソーセージ」と呼ばれるソーセージは、地元ボローニャの店にはない。ひと抱えもある大きな「モルタデッラ」と言わなければ通じない。
ところ変われば名も変わるものだ。
坂本鉄男
(2018年12月18日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)