カトリック教の司祭は童貞を守るのが義務である。その上、司祭には男性しか就くことができない。結果的に、司祭の男性による未成年男女信者に対する性的加害行為が頻発しているが、フランシスコ現法王は断固として許さない。
5月下旬、米国のミネアポリス大司教区は、450人の未成年の性的被害者に2億1千万ドル(約231億円)の賠償金の支払いを決定した。2007年にロサンゼルス大司教区が508人の未成年性的被害者に支払った6億6千万ドルに及ばずとも巨額な賠償額といえる。教会側は今回の賠償額のうち、1億7千万ドルは保険会社から支払われ、不足分は不動産の売却や教区内からの寄付金などで補うと説明しているが、中小企業なら倒産してもおかしくない金額だ。また、これだけ巨額の保険金を掛けていたということは、考えようによっては、教会が司祭による性的加害行為を予想していたのではないか。
現在のように、性的刺激の強い雑誌・映画などがあふれている世の中で、聖職者に童貞を守ることを強制すること自体が無理なような気がする。昔の法王の中には愛人に子供を産ませていた人物もいたのだから、カトリック教会も以前から問題になっている司祭の妻帯を真剣に考える時代に入っているのではなかろうか。
坂本鉄男
(2018年6月24日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)