さて、今年はシエナの「コントラーダ」にちなんで、動物とイタリア語をテーマにお便りしています。9月は文化の秋にふさわしく、知恵のシンボルであるフクロウのコントラーダをピックアップしたいと思います。
チヴェッタContrada Priora della Civetta
チヴェッタのコントラーダは、所属しているメンバーの人数も、テリトリーの広さもシエナで最小。けれど、パリオ祭ではコンスタントに勝利を手にしたり、また毎年秋には初物ワインのイベントを開いたりと活発に活動しています。
イタリア語の「 Civetta (チヴェッタ)」とはフクロウのことで、このコントラーダは名前に違わずフクロウをシンボルに掲げています。赤と黒を基調とした旗には、王冠をかぶったフクロウが鎮座しています。
イタリア語とフクロウ
例えば、フクロウが獲物をおびき寄せる様から、 男性に色目をつかったり、誰かれかまわず媚びを売る女性のことを「 civetta 」と呼ぶことがあります。「 Quella è una civetta(あの女、男に媚びまくりよ)!」といった感じで使われます。似たような表現で「 fare la civetta」や「 civettare」などもあり、こちらは「媚びを売る」という意味があります。
また、「 occhio di civetta (フクロウの目)」という言うと、そのきれいな黄色い目から「金貨」のことや「プリムローズの花」を指したりします。
ミネルヴァのフクロウ
さて、フクロウは西洋では古くから哲学や知恵を象徴する動物でした。ギリシア神話の女神アテネやローマ神話の知の女神ミネルヴァのシンボルでもあり、現代ギリシアの1ユーロ硬貨には古代ギリシアのコインに刻印されていたフクロウが描かれています。
フクロウが知のシンボルとなった由来は、目とくちばしがギリシア文字の φ のような形をしているからと言われています。この文字は哲学や黄金律のシンボルであり、知の探究や知の調和を表していました。
18世紀には、ドイツの哲人ヘーゲルが「ミネルヴァのフクロウは黄昏に羽ばたく」ということばを残しています。この文章にはいろいろな解釈がありますが、その中の1つは、「知を象徴するミネルヴァのフクロウ、つまり人間の知恵は、昼ではなく夜に活動するフクロウのように、最盛期を過ぎて歳を重ねてから獲得できるものである」と説明しています。
これからどんどん日が短くなり、夜の長い季節に入ります。フクロウにちなんで夜は本を読んだり、音楽を聴いたりと、秋はいつも以上に文化に親しむ時間ができそうですね。
ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン玲