2017年6月23日、24日にバチカン行政区カンチェレリア宮殿にて、日本・バチカンの国交樹立75周年を記念してバチカン勧進能が公演されました。バチカン勧進能では、能楽最古の演目「翁」と「羽衣」に続いて、復曲能「復活のキリスト」が上演されました。
約60年の歳月を経て再演されたこの演目は、上智大学の2代目学長ヘルマン・ホイヴェルス神父と16世宗家宝生九郎氏による作品で、キリスト教文化を広く理解してもらうことを目的として、能「隅田川」の着経て、聖書の和訳をそのまま引用するという意欲的な作品だそうです。
カンチェレリア宮殿内には特設舞台が作られ、各国の大使を含む多くの関係者の前で奉じられました。宮殿の映像はWEBに載せる許可が当局からおりませんので、その映像は貴重なものでした。
また、これに先立って6月19日に開催されたヴィチェンツァ テアトロオリンピコにての公演についても紹介されました。世界最古の室内演劇場での「世界古典演劇フェスティバル」のオープニングアクトとして特別に日本の能が招待されたその能楽公演の様子を公演写真とともに紹介されました。
能楽とキリスト文化との関係、そして荘厳なローマ文化と日本文化の伝統の美の絶妙な融合など今回の能楽公演の意義を解説されるとともに、ジョークを交えながらの臨場感あふれる御苦労話をお聴きするのは楽しいひと時でした。
文化交流を進めていくためには、継続と繰り返しが重要であるとの宝生様のお話には同感です。自ら実践される氏のさらなるご活躍を期待いたしております。
講師プロフィール
宝生 和英(ほうしょう かずふさ 能楽師)
1986年東京生まれ。父、第19世宗家宝生英照に師事。宝生流能楽師佐野萌、今井泰男、三川泉の薫陶を受ける。1991年能「西王母」子方にて初舞台。2008年に宝生流第20代宗家を継承。
これまでに「鷺」「乱」「石橋」「道成寺」「安宅」「翁」一子相伝曲「弱法師雙調ノ舞」を披く。伝統的な公演に重きを置く一方、異流競演や復曲なども行う。
また、公演活動のほか、マネジメント業務も行う。海外ではイタリア、香港を中心に文化交流事業を手がける。2015年ミラノ万博に参加、2016年にはミラノトリエンナーレ万博、ジャパンオルフェオ、ミラノスカラ座シンポジウムなど日伊国交樹立150周年事業に多数参加。同年には文化庁より東アジア文化交流使に任命され、香港に赴任する。2017年には日本バチカン国交樹立75周年バチカン勧進能を制作、出演。同年スカイツリー5周年イベント「能×VJ」にて演出、出演。