「イタリアマンドリン通信」
<夏季限定ミラノ 古楽コンサート><ティレニア海での滞在><素敵な少年との出会い>


<夏季限定ミラノ 古楽コンサート>

ある日の午前、オルガンの古楽コンサートに友人に誘われて行きました。内部のフレスコ画が見事で、ミラノ在住長い友人曰く、「かなり長い間修復してたわ。こんなに見事になったのね~」と感慨深い様子でした。

更に奥の部屋に移動。そこは、COROと呼ばれる教会主祭壇背後にある聖職者祈祷席の部屋でした。その部屋にもフレスコ画がびっしりで、2階には立派なパイプオルガンがありました。その日のコンサートはオルガンでしたが、まさかパイプオルガンとは思っておらず(教会ですからパイプオルガンなのですね)、期待に胸が高まりました。

実際に教会でオルガン演奏を完全に聴いた機会がなく、様々な音色を変えて演奏することを初めて知りました。この素晴らしい重厚な音色のパイプオルガン演奏と、長年の修復を終えた見事なフレスコ画を見ながらのロケーションの素晴らしさ、身近に気軽に楽しめるイタリア古楽を聴く機会を嬉しく感じました。臨場感溢れる体験でした。

数日後、ミラノ音楽院と隣接している教会の奥の部屋でリュート四重奏のコンサートがありました。多分普段は入れない場所と思われます。リュートにふさわしいこじんまりした、これまたフレスコ画と絵画で囲まれた美しい部屋でした。その正面に用意された舞台は、その昔、このように音楽を楽しんだのではと思われ、その時代にタイムスリップする場面でした。

先のミラノ音楽院の隣の教会ではなんとパイプオルガンが2つありました。最終日でもあり、かなりの人出と判断し1時間前から並びましたが、今までとは異なる規模のコンサートでした。イタリアにしては主宰者側の対応が完璧で、列の並びと入場手順がスムーズな観客の誘導でした。

祭壇前の狭い場所に指揮者のチェンバリストを含め、15名編成の若い奏者中心の古楽アンサンブルでした。チェンバリストは演奏しながらの指揮で、演奏者はチェロ、リュート以外は立っての演奏でした。友人曰く、『この時代はこういう形態での演奏があった』そうです。私は初めてでしたので、とても興味深いスタイルでした。

曲目は1700年代から1800年代までのバロックで、Concerti Grossiというこの時代に試された、ヴァイオリンパートのソロとその他の演奏を交互に浮き上がせるスタイルで、ヴァイオリン奏者の演奏も長いソロの妙技に観客を圧倒されました。15人編成で若い奏者が中心でしたが、そのダイナミックな演奏とそのレベルの高さに驚きました。

今回全部で4回ミラノ古楽コンサートに行きました。どれもまず日本では見られない環境でイタリア美術に囲まれながらの音楽鑑賞でした。イタリアの古楽文化の深さ、日本人の私には距離のある優雅な曲の数々…ため息の連続、素晴らしい体験でしたし、少しでも音楽性を学べられていたらと9月からの自分の活動開始に向けて期待したいと思います。

<ティレニア海での滞在>

2002年5月に、私は初めてフィレンツェのイタリア人女性の家で1週間のホームスティをしました。そのホストマザーとはそれ以来のお付き合いで、2007年にも3か月留学でもお世話になりました。彼女は日本にも旅行で訪れて、私の自宅にも招いて数日小旅行と観光案内し、良い思い出となっていました。

2014年からイタリア暮らしを始めてから、まだ彼女と会っておらず、早く会いたいと思っておりましたので、7月から8月中旬まで、いつも彼女が過ごすティレニア海の別荘に今回、呼ばれて数日滞在しました。

駅に着くと満面の笑みで迎えてくれ、車の中でも話がとどまることなく続きました。以前にもその別荘に滞在したことがあり、懐かしい思いでした。建物は全部綺麗に改装されており、ホテルのコテージの用でした。かなりお金がかかっただろうと思いました。

彼女曰く『その家は古かったし、自宅のあるフィレンツェの夏はかなり暑いし、町は観光客で溢れて年々居心地は余り良くないので、夏だけでなく、母親の実家にも近いその家に年間度々滞在する気持ちになって、思い切って綺麗にした』とのことでした。毎日3回はお母様に電話をし、無事を確かめ、お喋りして楽しませている彼女を尊敬しました。近くに住むお兄様も今は年金生活なので毎日母親の家に行って、助けているそうです。中々出来ることではありません。イタリア人の家族の思いやりの深さを感じました。

ある日の夕食だけ、私がお礼の意味で材料持参した「野菜の五目寿司」と「干しシイタケと素麺のすまし汁」を作って振る舞いました。イタリアのInsalata di riso と似ていますので、和食を食べたことのない彼女のパートナーも大丈夫だろうと。和食が好きで野菜系の彼女のことを思って作った五目寿司は好評でホッとしました。

帰る前日、私が最初にフィレンツェに留学した時に、何度かお会いした日本人女性の友人が、海に来た帰りに立ち寄られ、お互いに喜び会いました。もうかなり長い事会っていませんでしたので、お互いとても嬉しかったです。

その日本人女性が結婚するときに、私のフィレンツェのホストマザーの家から花嫁支度をして、結婚式に向かったそうです。そしてホストマザーのパートナーがその日本人の父親役を仰せつかり、結婚行進曲が流れる中、式場で花婿が待つ祭壇まで花嫁を導いたとのこと。ああ何て素敵なシーンだったでしょう。是非見たかったですね。思い出すように私に話してくれました。「彼女の家からお嫁に出たかった」と。家族同様のお付き合いの彼ら、そして今彼女の小さな息子さんにとって彼らがNonno(祖父)、Nonna(祖母)になっている姿を微笑ましく見ることが出来ました。

<素敵な少年との出会い>

前回のマンドリンサマーキャンプに、13歳のギターを弾く少年が初参加で来ていました。すらっとした容姿、透き通ったブルーの瞳、金髪もう一目でお気に入りマークを付けました(笑)。マダムキラー(古い?)と言うのでしょうか・・・ 通常はこの位の年齢でしたら当然保護者(母親か父親)同伴での参加ですが、何回か近くのテーブルで食事をしましたが、見当たりません。本人に尋ねると『独りで参加』で母親は送ってきて帰ったとのこと。びっくりしました。

レッスン時は兎も角、殆ど大人が参加者である中、彼に近い年齢の青少年は一人のみ。しかし彼はその少年とも常に一緒という訳でなく、あえて毎回異なる大人たちの中に交じって、笑顔で会話をしているのでした。

ギターのマエストロとも親しくかなり長い時間色々な話題の会話をしておりました。つまり、マエストロがある話をするとそれに対し自分の意見や会話をしているのです!まったくもってひるまず、子供っぽさとかはなく、一人前の会話をしているのです。

イタリアでは、割と少年少女は子供っぽく幼い場合が多く、母親は特に息子に対しては溺愛する傾向があり、今回のように大人びた13歳は珍しく驚きでした。

そして、私の先生(女性)も同意見でした。たまたまそこにその少年が通りかかったので、私の先生は彼を呼び止め「私達はあなたのファンなの♡。後で一緒に写真撮りたいけど構わない?」と言ったら、笑顔で「勿論!」と。。。その後、度々ホテルや練習場所ですれ違ったり、顔が合うと何ととろけるような眼差しと笑顔を返すのには参りましたです。もう一人前のイタリア男性ですね~。最終日の発表会もしっかりと演奏をし、その度胸と自信には脱帽でした。見習わねば。

そして、やっと彼とのショットを撮る機会を得て、私と先生はその写真でデレデレの笑顔で収まったのでした。あ~あ良い夏の思い出です。。来年も参加してくれるのを密かに期待しつつ。