イタリア南部バーリ市の大聖堂から聖ニコラ(ロシア正教では聖ニコラウスやニコライ)の遺骨を納めた聖櫃(せいひつ)が21日、ロシアに運ばれ、モスクワの大聖堂で公開された。多数の正教徒が礼拝のため訪れている。
昨年2月、ローマ・カトリック教会の頂点に立つローマ法王フランシスコとロシア正教会の最高位キリル総主教が1054年のキリスト教会の東西分裂以来となる歴史的会談を開催。聖櫃のロシア歴訪は、両者の間で決められた。
カトリック・ロシア正教・プロテスタントを含む全世界のキリスト教徒の間で、聖ニコラほどその名を知られている聖人はいない。例えば、サンタ・クロースの名前もこの聖人のオランダ語読みから出ているといわれる。
小アジアのギリシャ人の町ミュラ(現在のトルコ)の裕福な家庭出身の司教。慈悲の心と高徳、船乗りを守る奇跡は、中近東からヨーロッパまで有名であった。1087年、この聖人の町がイスラム教徒に占領されそうになったとき、バーリの船乗り67人が遠征して聖人の遺骨を持ち帰り、町の大聖堂に安置したとされる。
2007年に開催されたバーリでの伊露通商会談中、ロシアのプーチン大統領は非公式にこの聖人の礼拝に訪れたという。
坂本鉄男
(2017年5月28日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)