坂本鉄男 イタリア便り ホワイトデーに思う 聖バレンティーノにふさわしい肩書は

 いつも思うことだが、日本人は勤勉であるだけでなく、優れた創造力を持っている。2月14日の聖バレンティーノ(聖バレンタイン)の祭日に、カトリックとは縁もゆかりもない日本の女性の間に、男性にチョコレートを贈る習慣を定着させた日本の製菓業界の商魂は見事である。

 そればかりではない。聖人とは全く関係のない1カ月後の3月14日を、「チョコレートを贈られた男性が、女性にお返しを贈るホワイトデー」にしたアイデアには、ただただ脱帽してしまう。

 聖バレンティーノはローマから北東に約100キロの田舎町テルニで生まれ、カトリック教徒迫害時代の3世紀にローマで布教した。年については異説が多いが、269年2月14日、ローマの北の出口のフラミニア街道で斬首され、殉教したという。

 もともと、この聖人は日本で考えられるほど有名でなく、子供や家畜、てんかん病患者、養蜂家の守護聖人とされてきた。恋人たちの守護聖人となったのは、13世紀ごろといわれる。

 さまざまな分野で守護聖人と称される聖バレンティーノだが、今日、一番ふさわしいのは、「日本のチョコレート関連企業の守護聖人」の肩書ではないだろうか。

坂本鉄男

(2017年3月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)