夏は家出人、つまり行方不明者が増えるシーズンである。日本の警察庁によると、平成27年に受理した行方不明者届は8万2035人で、所在が確認される不明者も最近、年間8万人前後で推移しているという。海に囲まれていて勝手に出国できない上、警察組織が発達していることが背景にあろう。
イタリアでは最近、行方不明者が増加し、2015年末現在で3万5千人と前年比で5千人も増えたが、日本とは内容が異なる。大部分は東欧や中近東、アフリカなどから移住してきた外国人で、家族全員を置き去りにしたり、子供だけ連れて帰国したりするケースが多い。
一方、イタリア人の行方不明者は約8千人で大部分が男性である。手続きをせず国を出て姿を消す者、山などでの自殺者のほか、事故や誘拐事件に巻き込まれて殺された者も含まれると想像される。
1983年6月、バチカン市国内に両親と一緒に住んでいたエマヌエーラ・オルランドさん(当時15歳)は、ローマ市の中心から1・5キロの人通りの多い道を自宅に帰る途中で行方不明になり、いまだに消息が分からない。
実際、親への報復としてマフィアに殺され、死体を薬品で溶かされた少年のケースもあるから恐ろしい。
坂本鉄男
(2016年9月18日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)