バレリーナのガッリターノさん(37)は、18歳からミラノのスカラ座で踊ってきたが、2011年12月、英国の雑誌のインタビューで、若いバレリーナに課せられている過酷な現実を暴露した。それによれば、若いバレリーナは食事制限をさせられ、5人に1人は拒食症になり、10人中7人は月経不順に陥っているという。彼女自身も指導者に「モッツァレッラ(チーズの一種)」と罵(ののし)られ、リンゴとヨーグルトで体重を43キロに落とすよう強制された。
スカラ座側は、この記事によって名誉を傷つけられたとして、ガッリターノさんを退団処分とした。これに対しガッリターノさんは、この措置を不服として裁判所に訴えたのである。
裁判は双方とも譲らず、最高裁までもつれ込んだが、今年4月下旬、「退団措置は不当であり、元の職場に復帰させよ」との判決が下された。
バレリーナが太っていては見栄えがせず、役がもらえずに自然に淘汰(とうた)されるのだろうと思っていたが、まさか食事制限を強制されていたとは。それとも、強制するのは将来性がある証拠なのかもしれない。
英国のロイヤルバレエ団で日本人男女が最高位のプリンシパルの座に上ったが、2人のこれまでの努力を考えると頭が下がるばかりだ。
坂本鉄男
(2016年6月19日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)