イタリアでは贈収賄事件や不正入札、不正欠勤のニュースが連日、新聞紙上をにぎわしている。政治家と公務員の不正がこれほど多いものか、とあきれるほどである。
ローマ市では道路工事、清掃事業を含め、あらゆる部門で公共事業の不正入札が行われているといわれ、ローマの道路が補修後、すぐにデコボコになる理由がよく分かる。
ローマ市役所に関係するズル休みもひどい。昨年の大みそかには半数以上の交通巡査と地下鉄の運転士が休んだ。いずれも診断書付きの欠勤届が出ていたが、一度にこんな数の病人が出るとはまず考えられない。
しかも、不正欠勤で罰せられる職員は少なくて、最近、懲戒処分にされたのは年間115日間のズル休みをした2人だけである。
これはローマ市だけでなく全国的な悪癖であるらしい。昔は歌謡祭で有名だったサンレモ市では、悪徳職員が出勤時に同僚数人分のカードをタイムレコーダーに入れていたのが見つかり処分されている。
陸海空軍を持つ軍隊組織で密輸、脱税、不正入札を調査する財務警察は最近、道路公団の不正入札を摘発して20人以上を逮捕、巨額の現金を押収した。その総司令官は「いくら摘発しても順法精神の欠如が原因では仕方ない」と嘆いていた。
坂本鉄男
(2016年5月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)