現在の火星は人間の住める環境ではないものの、その環境を地球化する計画もあり、小説や映画に出てくるような火星への移住もそう遠くない未来に実現するのかもしれません。
火星の研究には、多くのイタリア人が貢献してきました。17世紀のガリレオGalileo Galileiは、初めて望遠鏡を使って火星を観察した研究者の一人です。また、ジェノヴァ共和国出身のカッシーニGiovanni D. Cassiniは、宇宙探検前の火星研究の第一人者です。19世紀後半には、スキアパレッリGiovanni V. Schiaparelliが火星表面の緻密な地図を作りました。
さて、日本語の「火星」という名は、古代中国の五行説に由来しています。五行の哲理では万物の元素を木、火、土、金、水とし、古くから知られていた5つの惑星もそれぞれの特徴にちなんで各元素が割り当てられました。火星はその赤い色から火の元素に属する星とされ、「火星」と呼ばれるようになりました。また、古代中国では火星を災いの前兆の星とみなし、「螢惑」の別名で呼ぶこともありました。
その後、ギリシア神話の神アレスとNergalが同一視され、火星はギリシアで「Aeros aster(アレスの星)」と呼ばれるようになります。(火星には小さな衛星が2つあり、アレスの子供フォボスFobosとダイモスDeimosの名前がつけられています。)続いて軍神マルスとアレスが同一視され、火星はローマで「Stella Martis」と呼ばれ、さらにシンプル化してMarsとなり、イタリア語の火星「Marte」となりました。
軍神マルスは古代イタリアやローマでとても人気のあった神さまで、色々な言葉の由来になっています。例えば、ローマを建国したロムルスは軍神マルスの息子であるため、古代ローマ人は自分たちのことを「figli di Marte」と呼んでいました。
イタリア語の3月「marzo」も、ラテン語の「Martius mensis(マルスの月)」から生まれています。軍神マルスの月marzoは古代ローマでは1年の始まりとなる聖なる月で、色々なお祭りが執り行われていました。そして、3月は春の始まりとともに戦争の始まる月でもありました。
また、占星術などで惑星Marteを表すシンボル「♂」も、軍神マルスの盾と槍をもとに作られたと言われています。このシンボルは、生物学では軍神マルスにちなんで「男性」を表したり、錬金術では酸化鉄の赤が火星と同じために「鉄」を表したりします
寒くなったり温かくなったりする忙しない時季ですが、皆さんどうぞお元気に春をお迎えください!
ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲