日本の昔の和算に「ねずみ算」というのがあった。1つがいのネズミが、親も子も孫たちも毎月子供を12匹ずつ産むと1年にどのくらい増えるかの計算である。答えはなんと276億8257万4402匹になる。
これが事実とすると、日本中はネズミだらけになり人間が住む余地が無くなるが、幸いネズミの増加は病死や餓死、人間による駆除によりこの計算通りにはならない。
ローマ市では最近、町の中で昼間でもネズミを見かけることが多くなった。ローマ市当局のネズミの数の推定は、和算の「ねずみ算」のように数学的ではなく、非常に楽観的で、市民1人当たり約3匹と見積もり、ローマ市の総人口を300万人としてローマ市内に住むネズミを900万匹と推定している。
ネズミが増えた原因には今年の暖冬に加え、道路に捨てられる飲食店などからの食べ物の残りや道路脇のゴミ箱の家庭ゴミなど食料に困らないことが挙げられる。ローマの町は、地下に住むネズミのほか、こうしたゴミに集まるカモメ、カラスなど空からの侵入者も多い。また、昔はネコはネズミを捕る動物と考えられていたが、今のネコはネズミに見向きもしない。万一、ネズミを捕ってきたら主人が腰を抜かしてしまうだろう。
坂本鉄男
(2016年3月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)