わが国でも昔、ラジオの天気予報があまり当てにならない時代には、遠足や運動会の前日、子供たちは小雨なら「てるてる坊主」をつるし、曇りならげたをほうり上げ天気占いをしたものだ。現在は気象衛星からのデータが常に入る上、気象予報士になるには合格率5%前後という難しい国家試験に合格しなければならない。日本の天気予報の的中率がイタリアなどと比べはるかに高いわけである。
イタリアでも最近、各地で突然の集中豪雨による被害が続出しているが、奇妙なことにイタリアには国営の気象観測機関が存在しないばかりか、国が公式に認定する気象予報士の制度もない。国営テレビRAIの天気予報は空軍の気象班の将校が担当し、民間テレビ局は民間の気象予報会社と契約をしているが、ともに的中率は「まあまあ」だ。
だが現在のように気象衛星や近隣諸国から天気図が絶えず送られてくると、空軍の気象班も民間の気象予報会社もデータに不足はなく、北伊の「アルパ・ピエモンテ社」のように的中率80%を誇るものもある。
それにしても、現状ではお粗末過ぎるとの声が上がってきたが、特に去る10月、気象関係の唯一の専門家だったボローニャ大学教授が定年退職し、彼らもにわかにこの分野の欠陥に気が付いた。気づいただけヨシとすべきか。
坂本鉄男
(2015年12月20日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)