いよいよあと1カ月少々で「特別聖年」が始まる。神がカトリック教徒の罪を特別に許すのが聖年だが、特別聖年は、特別な目的があるときにローマ法王の権限で宣するもの。
約1年間の聖年期間中にローマには2500万人以上の巡礼者と関連の観光客がやってくると予想されるだけにローマ市当局は大わらわだ。慌てている原因は2つある。
第1の原因は、法王フランシスコが今春、出し抜けに特別聖年を宣言したことだ。普段なら聖年は25年ごとだけに余裕があったが、今回は準備期間が1年足らずしかない。予算も立てておらず政府に特別援助を要請せざるを得なかった。
第2は市当局の長年の行政能力の欠如だ。ローマの道路は先進国の首都として恥ずかしいほどでこぼこだ。また、市営の地下鉄もバスも清掃事業も、従業員の規律の無さと頻繁なストで交通機関は正常運転とは縁が遠く、道路脇のゴミ箱はゴミの山だ。市は体面上、問題解決に取り組み始めたが、間に合うかどうか甚だ心もとない。
ただ2500万人以上の巡礼と観光客が落とすお金は、財政難の市当局にはまさに干天の慈雨。市民にとっても法王の突然の特別聖年宣言により万一、ローマ市が面目を一新してくれれば、「神の御利益」といえるかも。
坂本鉄男
(2015年11月1日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)