夏になると、家族を海や山に行かせ、都会に残って1人で働いている男性を目当てに、ローマなど大都市の郊外の道路上に素肌もあらわな服装をした女性が群れをなす。
日本でもイタリアでも1958年以来、売春防止法が施行されているが両国とも全くのザル法で、現実は野放し状態である。
実際、日本の性風俗産業で働く女性は外国人を含めて30万人くらいと推定され、イタリアでも不法入国の外国人女性を主体として約7万人がこの「世界で一番古い職業」に従事していると考えられている。
ヨーロッパではドイツ、フランス、オランダ、スイスなど多くの国が成年女性の職業の一つとして合法化しているのに、日本でもイタリアでも名目上は非合法化されているため、かえって暴力団組織による女性の人身売買や搾取の対象にされていることが多い。
このため、イタリアの国会議員の一部が、これまでの売春禁止法に代わる適切な法規を作って彼女たちを人身売買や搾取から守り、公衆衛生面でも保護することを考えている。
また合法化すれば、年間総額90億ユーロ(約1兆2千億円)以上に上る彼女たちの収入に課税することも可能であるという。
わが国の国会では果たして検討の余地はあるだろうか。
坂本鉄男
(2015年8月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)