坂本鉄男 イタリア便り 公務員の給与格差

イタリアのレンツィ首相は国の借金減らしに大なたを振るっているが、その一環として、高級官僚と国有企業幹部の年俸最高額を大統領の年俸23万9千ユーロ(約3300万円)まで引き下げようとしている。

日本では考えられないことだが、政党が強い権力を持つイタリアでは、任命の際に政党が介入するケースが多いとされる、国有企業や官庁の幹部職員の給料と、その他の省庁職員の給料には大きな格差がある。

例えば、トレーニイタリア(旧国鉄。今は政府が大株主の株式会社)社長の年俸は87万3千ユーロ(約1億2千万円)だし、国有の郵便会社社長の年俸はさらに高い。トレーニイタリアは、日本のJRと比べると劣ることが多くても勝る所はほとんどない。郵便も東京からローマへの郵送物が、ローマ市内での配達の遅滞で1カ月以上もかかって届くことがよくある。

公務員の中でも政党との関係が深く、給料が一番良いとされる上下両院事務局の場合、30年勤続の幹部職員の年俸は30万ユーロ以上に達するといわれる。つまり、大統領より多い報酬を得てきたことになる。

一方、文部省所属の教職員の給与は低く、小中高校の教員の平均年額は3万ユーロ前後である。レンツィ首相は既得権益を守ろうとする官僚との戦いに苦労するに違いない。

坂本鉄男

(2014年6月1日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)